「先生、次は紙芝居です」
部分実習で紙芝居を読んでいたときのことです。ページをめくって「がおー、って一緒に言ってみようね」と声をかけたのに、返ってきたのは静けさでした。
近くにいた子はもう隣の子とおしゃべりを始めていて、別の子はふらふらとおもちゃのコーナーへ歩いていってしまう。手元の紙芝居のページだけが、やけに重く感じられる。次に何を言えばいいのか、頭の中が真っ白になってしまう。
「担当の先生が後ろで見ている。失敗したと思われたかもしれない」。そんな焦りが一気に押し寄せてくる瞬間です。
部分実習では、こうして指導案どおりに活動が進まなくなる場面が、誰にでも一度は訪れます。でも先に伝えておきたいのは、活動が止まってしまうことは、実習生としての力不足でも失敗でもないということです。今回は、部分実習の途中で活動が止まってしまったときに、どう考え、どう立て直していけばいいのかを、具体的な場面を交えながら紹介します。
活動が止まるのは、よくあることです
子どもは一人ひとり興味も発達も違います。同じ4歳児クラスでも、じっと座って話を聞ける子もいれば、5分と座っていられない子もいます。
さらに、その日の体調や気分によっても反応は大きく変わります。前日あまり眠れなかった子、朝ごはんを食べずに登園した子、お家で嫌なことがあった子。同じ活動をしても、昨日はうまくいったのに今日はまったく反応が違う、ということは普通に起こります。
例えば制作活動で、のりを使う工程を説明したとします。ある子はすぐに理解して手を動かし始めますが、別の子は「のりって何につけるの?」と戸惑ったまま固まってしまう。早く終わった子たちは待ちきれずに席を立ち始め、教室全体がざわつき始める。こうなると、指導案に書いた進行はあっという間に崩れてしまいます。
これは実習生の伝え方が悪いから起きているわけではなく、子ども集団を相手にする以上、当たり前に起こることです。「計画どおりに進まなかった」ではなく、「今日のこの子たちに合わせる時間になった」と、まず頭の中で言い換えてみましょう。
止まってしまったときに立て直す3つのポイント
ポイント① まずは深呼吸して、子どもの様子を見る
活動が止まると、反射的に「早く何とかしなきゃ」と焦ってしまいます。ですが、焦ったまま声を出しても、余計に空回りしてしまうことが多いものです。
一度だけ、心の中で深呼吸をしてみてください。そのうえで、子どもたちの様子をよく見てみましょう。
・何に興味を持って離れていったのか
・困っている子、不安そうな顔をしている子はいないか
・集中が切れた原因は、活動の内容なのか、時間帯なのか、それとも別の出来事なのか
例えば、窓の外を見ている子が多いなら「外に気になるものがあるのかな」と考え、「今、外で何が見えるか教えてくれる人?」と一言拾ってあげるだけで、子どもの気持ちがこちらに戻ってくることもあります。止まった原因を探ることが、次の一言につながります。
ポイント② 一人で抱えこまず、保育者に頼る
実習中は「自分でなんとかしなければ」と気負ってしまいがちです。ですが、部分実習はテストではなく、学びの場です。困ったときに助けを求めるのも、大切な力のひとつです。
担当の保育者と目が合ったら、小さくうなずいてみる。あるいは「ちょっとお手伝いいただけますか」と声に出して頼ってみる。それだけで、場の空気がふっと軽くなることがあります。
保育者は、学生ができているかどうかを採点するためだけに見ているわけではありません。困ったときにどう動くかも含めて、実習生の学びを支えようとしてくれています。当日いきなり頼るのが不安な人は、事前にどんな準備をしておくと当日動きやすいかを確認しておくと安心です。
ポイント③ 気持ちを切り替えて、最後までやり切る
思うように進まなかったとしても、その場で気持ちを引きずる必要はありません。
活動の後、ある実習生は「途中で子どもたちがバラバラになってしまって、もうだめだと思った」と落ち込んでいました。ところが、片付けの時間に子どもたちから「今日の紙芝居おもしろかったね」「また今度読んでね」と声をかけられたそうです。
子どもたちは、実習生が途中で戸惑ったことよりも、一緒に過ごした時間そのものを覚えています。多少うまくいかなくても、最後までやり遂げようとする姿勢のほうが、子どもにはずっと伝わっています。
止まった場面で使える声かけ・行動の例
とっさに言葉が出てこないときのために、いくつか使いやすい声かけを知っておくと安心です。
・「あれ、今なにをしているのか教えてくれる人?」(子どもの興味に注目を移す)
・「先生も一緒に見てみよう」(子どもの視線に寄り添う)
・「ここまでできたね、すごいね」(できているところを認めて場を落ち着かせる)
・「もう少しだけ、一緒にやってみようか」(無理に急がせず誘う)
言葉が出てこないときは、無理に話し続けようとせず、いったん子どもの近くにしゃがんで様子を見るだけでも十分です。沈黙を怖がりすぎないことも、落ち着いて立て直すための一つのコツです。
よくある失敗パターン
指導案どおりに戻そうと焦ってしまう
予定を取り戻そうとするあまり、目の前の子どもの様子が見えなくなってしまうことがあります。指導案はあくまで見通しのための道具であり、絶対に守らなければならない台本ではありません。その場の子どもに合わせて進め方を変えることも、立派な実習の学びです。
「失敗した」と自分で決めつけてしまう
活動が止まった、予定どおりに進まなかった、というだけで「実習が失敗だった」と結論づけてしまう学生は少なくありません。しかし、その場でとっさに考え、対応しようとした経験そのものが学びです。実習後の振り返りで「なぜ止まったのか」「次はどうするか」を言葉にできれば、それは十分に成果のある実習だったと言えます。
活動が止まりにくくなるように、事前にできる工夫
当日の対応力ももちろん大切ですが、事前の準備によって、活動が止まる場面そのものを減らすこともできます。
活動の始まり方、いわゆる導入の部分をしっかり作っておくと、子どもの気持ちを引きつけたまま活動に入りやすくなります。導入で子どもの興味をつかめると、途中で集中が切れる場面もぐっと減ります。
また、当日どんな持ち物や声かけを準備しておくとよいかを、事前にイメージしておくことも安心材料になります。準備の段階でつまずきやすいポイントを知っておくと、当日慌てずに対応しやすくなります。
まとめ
部分実習で活動が止まってしまったときは、
・まず深呼吸して、子どもの様子をよく見る
・一人で抱えこまず、保育者に相談する
・気持ちを切り替えて、最後まで活動をやり遂げる
この3つを意識してみましょう。
部分実習は、指導案どおりに進めることだけがゴールではありません。目の前の子どもの姿を見ながら考え、工夫し、その場でどう対応するかを学ぶことこそが、実習の大切な時間です。
うまくいかなかった経験も、次の実習に向けて必ず自分の力になっていきます。今日の一つひとつの経験を、恐れずに積み重ねていってください。

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